【コラム】「次亜塩素酸水」とは何か?
緊急事態宣言は取り下げられたもののまだまだ決して油断できない新型コロナウィルス感染症。
消毒用として非常に有用なエタノール溶液が非常に不足していた時期がありましたが、その時注目されたのが「次亜塩素酸水」です。
当初、その有効性について疑問視されていましたが、最近(2020年6月)NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)がその有効性を確認し、コロナウィルスに対する使用方法が公表されました。
その発表によると、一定濃度の「次亜塩素酸水」が新型コロナウイルスの感染力を一定程度減弱させることが確認されています。
その使用方法や、注意点については厚生労働省の特設ページ「新型コロナウイルスの消毒、除菌方法について」をご参考にしてください。
そこで今回は、「次亜塩素酸水」とは何なのか化学的にご紹介したいと思います!
「次亜塩素酸水」とは?
厚生労働省より、次亜塩素酸水の定義は「塩酸又は塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である」と定義されています。
食品添加物(殺菌剤)「次亜塩素酸水」を生成するためには、専用の装置が必要であり、装置の規格基準はJIS B 8701として2017年10月に日本工業規格が制定されています。
一方、殺菌に有効とされるもので「次亜塩素酸ナトリウム(次亜塩素酸ソーダ)」というものがあります。
例として、台所用漂白剤(キッチンハイターなど)や、水道水の消毒剤としてよく知られています。
名前が似ているこの2つですが、化学的にどういった違いがあるのでしょうか。
「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」化学的になにが違う?
「次亜塩素酸水」とは
次亜塩素酸水は、塩酸または塩化ナトリウム水溶液(食塩水)を電解することにより得られる、有効塩素として次亜塩素酸(HClO)を主成分とし、10~80ppmの有効塩素濃度を持つ酸性電解水です。
要約すると、塩酸か食塩を加えた水を電気分解することで生成できるお水です。
「次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)」とは
次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の製法としては、一般的に強アルカリ性の水酸化ナトリウム(NaOH)溶液に塩素ガス(Cl2 )を通気することによって生成されます。
最高で有効塩素濃度として約12%(約120000ppm)もの高濃度で存在できます。
次亜塩素酸ナトリウムは水溶液中でナトリウム(Na+)と次亜塩素酸イオン(ClO⁻)という形に分離して存在します。
ここで出てきた塩素ガス(Cl2)、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO⁻)は溶液のpHによって存在比率が異なり、
- pH3まで(酸性)は、ほとんどが塩素ガス
- pH4~7(弱酸性〜中性)では次亜塩素酸の成分が多く存在
- pH8以上(弱アルカリ性~アルカリ性)になると次亜塩素酸イオン
となります。
また、正式には次亜塩素酸水とは認められていませんが、次亜塩素酸ナトリウム溶液に少しづつ酸を加えてpHを弱酸性付近まで調整できれば、理論的には次亜塩素酸水もどきを作ることができます。
実際にこのようにして作られた次亜塩素酸水も売られているようですが、設備が整っていない家庭などで(キッチンハイターと酢を混ぜるなどして)作ろうとするとpHが酸性になりすぎて塩素ガスが発生し、大変危険ですので絶対にやめてください。
塩素ガスも次亜塩素酸も次亜塩素酸イオンも全てが殺菌作用を持っていますが、塩素ガスは非常に危険性の高いガス(世界で初めて戦場で使われた毒ガス兵器なんです)なので一般的には使用されません。
したがって、次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの2つが除菌剤として活用されています。
最後に
いかがだったでしょうか?
今回は、「次亜塩素酸水」とは何なのか化学的にご紹介しました!
消毒は大切ですが、何に、どのような成分のものを使用するかが重要となります。
また、次亜塩素酸水がなぜ注目されているかご紹介しているブログもありますので、こちらもぜひご覧ください!