【分析項目解説】カドミウムとは?カドミウムの毒性と規制内容について
皆さんはカドミウムという物質の名前を聞いたことはありますか?
これは、イタイイタイ病と言う有名な公害病の原因となった物質です。
この公害が契機となり、一般に広く知られるようになりましたが、このカドミウムとはどのようなものかご存じでしょうか。
そこで今回は、カドミウムとは何か、その有毒性と定められている規制についてご紹介していきます!
カドミウムについて
カドミウムとは、鉱物中や土壌中などの天然に存在する重金属で、電池や鍍金(メッキ)材、合金や顔料、安定剤として工業製品等に使われています。
今ではリチウムイオン電池が主流ですが、ニッケル-カドミウム電池、通称ニッカド電池と呼ばれる充電池があり、ここでもカドミウムが使用されています。
更に、塩分に対する耐食性に優れていたため、航空機や船舶等の重要部品の鍍金材としても使用されています。
他には、熱伝導が良く、耐摩擦性、低い摩擦係数、衝撃吸収性に優れていたため、合金や接点材料としても使われています。
これらの他にも様々な用途に使用されています。
このようにカドミウムは非常に優れた特性を持つ物質であるのですが、それと同時に、有毒な物質でもあります。
カドミウムの有毒性について
カドミウムは冒頭で記述したようにイタイイタイ病の原因となった物質です。
人体に有害な物質で、毒性が強く、多量に身体に蓄積してしまうとカドミウム中毒となります。
カドミウム中毒になると、腎機能に障害が出ます。
さらに、腎機能障害によって骨が弱くなって腰や背中、手足の骨や関節の痛みが生じます。
また、腎臓の障害によって貧血になり、全身のだるさや疲れやすさが強く現れます。
この中毒症状が極めて重篤となった症例がイタイイタイ病です。
このようなカドミウム中毒者が出ないように今では厳しい水質基準が設けられています。
カドミウムの規制について
カドミウムに関係する主な規制として、「水質汚濁防止法」、「土壌汚染対策法」等があり、非常に厳しく設定されています。
水質汚濁防止法では、特定施設を有する事業場(特定事業場)から排出される水について、 排水基準以下の濃度で排水することが義務づけられています。
工場排水等のカドミウムの排水基準は0.03mg/L以下に定められています。
カドミウムは水質汚濁防止法では有害物質として規定されており、この有害物質に規定された物質を製造、使用又は処理を行っている特定事業場からの排出水は地下への浸透が禁止されています。
もし有害物質を含む排出水の地下への浸透があり、健康被害のおそれが認められた場合、都道府県知事より地下水の浄化措置命令が出されます。
平成26年には地下水の浄化措置命令に関する浄化基準が0.01mg/Lから 0.003mg/L以下へと改正されています。
そして令和3年には土壌汚染対策法におけるカドミウムの各基準が以下の表のように改正されます。
土壌汚染対策法により、土壌汚染について定められている基準には「土壌溶出量基準」、「土壌含有量基準」、「地下水基準」があります。
土壌溶出量基準とは
土壌溶出量基準とは、土壌に水が接触した時に水に溶けだしてくる量に関する基準になります。
土壌が雨水や河川水、地下水等に接触すると土壌中の成分が水に溶けだします。
この水に溶け出た成分がどの程度の量ならば問題ないのかを定めています。
これは、飲用水等を通して人体に間接的に摂取されるリスクについて定めた基準になります。
地下水基準とは
地下水基準は、土壌流出基準と同様のリスクにおける基準となります。
雨水等により土壌から溶け出た成分を含む水は地下水となり飲用水となる可能性があるためです。
土壌含有量基準について
土壌含有量基準とは、土壌に含まれる量に関する基準です。
この基準は、土壌が風等で舞い上がった際に呼気と一緒に摂取したり、口や皮膚から摂取したりと、人体に直接的に摂取されるリスクについて定めた基準になります。
これらの基準を超えた土壌汚染が見つかった場合には、土壌汚染対策指針に従って適切な措置を行う必要があります。
この措置の方法を決める際に、土壌溶出量基準の30倍となる土壌第2溶出量基準を用いることがあります。
カドミウムは上記の法令による規制以外にも、
- 水道法による飲料水
- 食品衛生法による飲食物や添加物
- 労働安全衛生法による作業環境
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律による廃棄物
等が規制されています。
最後に
今回のブログでは、カドミウムについてご紹介しました。
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水質や土壌だけでなく、食品・作業環境・廃棄物等の広い範囲での分析に対応しております。
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