【分析機器解説】選択的高感度検出器(電子捕集検出器・質量分析計)について
前回のブログでは、ガスクロマトグラフで使用される選択的高感度検出器の炎光光度検出器と熱イオン化検出器についてご紹介しました。
※炎光光度検出器と熱イオン化検出器についてはこちらのブログを参考にしてください
そこで今回は、引き続き選択的高感度検出器である電子捕集検出器と質量分析計についてご紹介したいと思います。
選択的高感度検出器の種類について
電子捕獲検出器(ECD)
ハロゲン(塩素(Cl)、フッ素(F)など親電子性物質と呼ばれ、マイナスの電気を帯びている電子をとりこみやすく陰イオンになりやすい物質)、ニトロ基(-NO₂)を含む物質を高感度に検出できます。
一方で炭化水素類(炭素と水素からできているもの)はほとんど応答しません。
測定したい物質にハロゲンやニトロ基がなくても、対象物質をハロゲン化、ニトロ化することで測定が可能になります。
ECDにはニッケル63(63Ni)というβ線を放出する放射性同位元素が封入されていて、カラムに流れているキャリアーガス(窒素(N2)など)をイオン化(N+)して電子(e-)を生成し、この電子をハロゲンが捕獲します。
このやり取りで電流値に変化が起き、ピークとして検出され測定したいものの量を知ることができます。
当社では、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、アルキル水銀の分析に使用しています。
質量分析計(MS)
物質を気体状のイオンにし、その質量数と数を測定することで成分の同定(物質が何か)や定量(どれくらい含まれているか)を調べることができます。
質量分析計は試料導入部、イオン化部、質量分離部、検出部、データ処理部などから構成されています。
試料をイオン化する方法には、電子を当ててイオン化する電子イオン化(EI:Electron Ionization)法、電気を帯びた反応ガスを当ててイオン化する化学イオン化(CI:Chemical Ionization)法などいろいろな方法がありますが、一般的にはEIが用いられます。
イオンになった試料は質量分析部で分けられます。
質量分析部にも四重極型、飛行時間型、イオントラップ型など数種類ありますが最も普及しているのが四重極型です。
検出部では質量分析部で分けられたイオンを増やして電流として検出します。
さらにデータ処理部で得られた情報をクロマトグラム(出力と時間をグラフ化したもの)やマススペクトル(質量分布をグラフ化したもの)として処理されます。ガスクロマトグラフ(GC)と組み合わせて使うことで、化学的性質の違いによる分離を続けて行うことができ、より情報量の多い結果を得ることができます。
MSでは物質ごとのスペクトルを蓄積しているデータベースが充実しているため、検出器の中でも定性(検出された成分が何か)を調べるのに最も適しているといえます。
最後に
今回のブログでは、選択的高感度検出器である電子捕集検出器と質量分析計についてご紹介しました。
当社では、水中の揮発性有機化合物、クロロエチレン、トリハロメタン、農薬類、ハロ酢酸などの分析時に使用しています。
ご相談などありましたら、お気軽にお問い合わせください。