【溶接ヒューム測定】実際の測定値と測定後の対応について
「溶接ヒューム」が神経障害等の健康被害を及ぼすおそれがあることが明らかになったため、特定化学物質障害予防規則の特定化学物質として規制対象になりました(2021年4月1日より施行されています)。
規制対象となったことで、個人サンプラーを用いた溶接ヒューム濃度測定が義務付けられ、当社でもこれまでに約50作業場の測定を行いました。
※実際の測定の様子についてはこちらのブログを参考にしてください
そこで今回は、実際の測定値と、測定後に対応についてご紹介したいと思います。
溶接ヒューム濃度測定について
溶接ヒューム測定の流れは下記の様になります。
濃度測定値に関しては図にあるように、マンガンが0.05mg/m3未満であるか、0.05mg/m3以上であるかで、その後の対応が分かれます。
0.05mg/m3未満の場合
基準値未満のため、測定は一度だけとなり、次のマスクの選択に移っていきます。
0.05mg/m3以上の場合
基準値を超えているため濃度低減措置を行い、値を下げる必要があります。
その後、再度溶接ヒューム濃度測定を行い、再測定の結果をもとにマスク(呼吸用保護具)の選択を行います。
マスクの選択
マスクの選択については、測定結果より要求防護係数を求め、それより大きい指定防護係数のマスクを選択します。
※マスクの選択については、こちらのブログを参考にしてください
測定回数や低減措置が必要となるため、みなさん基準値を超えるかどうか関心が高いかと思います。
実際のところ、金属アーク溶接等作業を行っている現場においては、0.05mg/㎥未満というのはクリアするのが、なかなか難しい値となっています。
基発(労働基準局長通達)0422第4号に記載がありましたが、実態調査において、作業環境測定評価を行った際には、第3管理区分に相当する作業場所が6割程度あったとされています。
当社で行った測定でも約7割の作業が、基準値を超える値となっています。
溶接の種類がティグ溶接の様にヒュームの発生が少ないものから、被覆アーク溶接の様にヒュームの発生が多いものなどがあるため、ひとまとめにはできませんが、基準未満とするのは難しい作業が多い印象です。
濃度低減が難しい理由について
なぜ、濃度低減が難しいかというと、溶接という作業の性質に原因があります。
溶接作業において、局所排気装置等を設置して発生源でヒュームを吸引すると、溶接時のシールドガスがうまく機能しなくなるなどして溶接不良が起きてしまい、作業自体が成り立たなくなってしまう可能性があります。
そのため、局所排気装置等が設置できる場合でも、ある程度風速を弱めたりする必要があり、装置があっても濃度が基準値未満まで落とすことが難しいということになります。
濃度低減措置について
濃度低減措置には
- 換気装置の風量増加
- 溶接方法や母材、溶接材料等の変更による溶接ヒューム量の低減
- 集じん装置による集じん
- 移動式送風機による送風の実施
などがあり、事業所で行っている作業に合った措置を検討する必要があります。
当社が、実際に測定に立ち会ってみて感じたことは、同様の作業を行っているグループにおいても個人差がでることです。
それは溶接作業時の姿勢であったり、保護面の使い方などの要因が考えられます。
実測値として同様設備、同様作業において10倍程度の差が出たケースもあります。
すでに溶接作業を行っている事業場では、測定からマスク選定までを猶予期間である令和4年3月31日までに行う必要があります。
最後に
今回のブログでは、実際の測定値と、測定後に対応についてご紹介しました。
溶接ヒューム測定についてご相談などがありましたら、お気軽にお問い合わせください。