【環境解説】愛知県の河川の水質調査結果について
先日、当社の河川の水質調査の様子についてご紹介させていただきました。
では実際、河川の水質の状況はどうなっているのでしょうか?
今回は、6月に愛知県環境部から発表された2019年度の河川の水質調査結果についてご紹介したいと思います!
健康項目(人の健康の保護に関する環境基準項目)の調査結果について
健康項目とは、人の健康に被害を及ぼす項目で、いわゆる有害物質(カドミウム、シアンなど)のことです。
河川については、98地点で調査が行われました。
その結果、1地点(荒⼦川ポンプ所)で1,2-ジクロロエタンが環境基準を超過していました。
1,2-ジクロロエタンとは
合成樹脂の原料などに使用される物質で、腎臓、肝臓などの障害の原因となります。
荒子川ポンプ所は、名古屋市港区にあり、地盤沈下により自然排水が難しくなった荒子川の水を名古屋港に強制排水する施設です。
平成10年度の調査で1,2-ジクロロエタンが環境基準を超過しました。
汚染原因調査の結果、川底の土が高濃度に汚染されていることが明らかになり、その土を取り除く作業が行われました。
また、付近の土壌から廃棄物と考えられる層も見つかり、現在でもほぼ毎年環境基準を超過する状況が続いています。
ただし、周辺の既存井戸の水質は地下水の環境基準に適合しています。
(名古屋市「荒子川1,2-ジクロロエタン流域調査結果」より参照)
生活環境項目(生活環境の保全に関する環境基準項目)の調査結果について
生活環境項目とは、pH、BODなど、水の汚れや農業、水産業などに関係する項目です。
河川については49水域で調査が行われました。
水質汚濁の代表的な指標であるBODについては、46水域で環境基準が達成されました(達成率94%)。
1973年ごろと比べるとずいぶん改善されたことがわかります。
愛知県「2019年度公共用水域及び地下水の水質調査結果」より参考
河川49水域(BOD)の環境基準達成率の推移
また、水生生物の生育に影響する3項目(全亜鉛、ノニルフェノール、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩))が、「水生生物の保全にかかる環境基準項目」として定められています。
水生生物の保全にかかる環境基準項目について
- 亜鉛…金属の一種で、トタンと呼ばれるメッキ材、電池、医薬品の材料などに利用されています
- ノニルフェノール…合成洗剤の主成分の原料、印刷インキの原料などに使用されています
- LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)…合成洗剤の主成分などに使用されています
水生生物の保全にかかる環境基準項目については、42水域で調査が行われ、全亜鉛は38水域、ノニルフェノール、LASはすべての水域で環境基準を達成しました。
今回の調査結果から、公共用水域の水質は、おおむね良好に保たれていると言えると思います。
ただし、荒子川ポンプ所のように一度水質汚染が起こると、それを取り除くことは困難であることもわかります。
水質汚染を未然に防ぐためにも、今後とも意識していきたいです。
ほかの調査結果の詳細については以下のリンクからご覧ください。
(愛知県「2019年度公共用水域及び地下水の水質調査結果、大気汚染調査結果について」)
最後に
今回のブログでは愛知県の河川の水質調査結果についてご紹介しました。
当社では、行政からの委託による河川の水質調査を行っており、その様子を先日の記事でご紹介させていただきました。
工場排水の影響を調べたい、農業用水の水質を確認したいなど、気になることがありましたらお気軽にご相談ください。