喫煙室には法律で決められた基準があります|喫煙専用室の技術基準と定期確認のポイント
喫煙専用室に、健康増進法で定められた技術基準があること——ご存知でしたか? 「分煙にすればよい」という理解で止まっている事業者も少なくありませんが、実は喫煙専用室そのものに「気流」「区画」「屋外排気」という具体的な基準が法律で定められています。しかもこの基準は「設置した瞬間」だけでなく、稼働している間ずっと満たしておくべきものです。この記事では、中小事業者の総務・安全衛生担当者向けに、基準の中身と、企業が実際にやるべきことを整理します。
実は、この基準の存在を知らなくても不思議ではありません。国立がん研究センターの世論調査(2023年公表)によると、受動喫煙対策の強化そのものを「知らなかった(今初めて知った)」と答えた人は、喫煙者で18.6%・非喫煙者で49.2%にのぼりました。「法律が変わったこと」または「受動喫煙対策が強化されたこと」のどちらか一方でも知っていた人(20歳以上全体の55.8%)のうち、「喫煙室には技術的基準が設けられており、基準を満たさない喫煙室は使用できない」ことまで知っていたのは25.5%にとどまりました。単純に掛け合わせた試算では、20歳以上全体で見るとおよそ14%(7人に1人程度)にとどまる計算です。
※本記事の数値は20歳以上の回答者2,000人(喫煙状況の実際の比率に合わせて重み付け調整済み)に基づくものです。調査全体の回答者数は18・19歳を含め2,029人です。
この記事の要点
- 喫煙専用室には「気流0.2m/s以上・壁と天井等での区画・屋外排気」という法的な技術基準があります
- 設置直後だけでなく、基準を満たした状態を維持することが求められています
- 厚生労働省の参考資料は、目安として概ね3か月以内ごとの測定を示しています(法令上の義務ではありません)
- 脱煙機能付き喫煙ブース(経過措置)では、TVOC(総揮発性有機化合物)に関する性能基準も関係します
喫煙専用室、企業がやるべきことは3つ
- 義務喫煙専用室の技術基準を満たす:出入口の気流0.2m/s以上・壁天井等での区画・屋外排気
- ガイドライン基準脱煙機能付き喫煙ブース(経過措置)を使う場合は、性能基準も満たす:TVOC除去率95%以上・排気粉じん0.015mg/m³以下(厚生労働省ガイドライン〔基発0701第1号〕に定める要件)
- 推奨設置後も基準を満たし続けているか、定期的に確認する:目安は概ね3か月以内ごと(良好な状態が1年以上継続し、影響事象がなければ年1回まで軽減可)
※「義務」は法律・施行規則に基づく基準、「ガイドライン基準」は厚生労働省ガイドライン(基発0701第1号)に定める要件(経過措置を使う場合に満たす必要があります)、「推奨」は厚生労働省の参考資料が示す目安です(法令上の測定義務ではありません)
喫煙専用室の基準とは?(ここは法律上の義務です)
結論:気流・区画・屋外排気の3つは、健康増進法に基づく法的な設置基準です。
改正健康増進法は、望まない受動喫煙を防ぐため、屋内を原則禁煙とし、喫煙をする場所は喫煙専用室などに限定しました。喫煙専用室に求められる技術基準は、健康増進法第33条第1項・同法施行規則第16条第1項に定められています。

- 出入口の気流が毎秒0.2メートル以上:喫煙専用室の出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が0.2m/s以上であること
- 壁・天井等による区画:たばこの煙が室外に流出しないよう、壁・天井等で完全に区画されていること
- 屋外排気:室内の空気を屋外に排気し、施設内の他の場所に排出しないこと
この3つは設置時にクリアすればよい話ではなく、稼働している間、常に満たしておくべき基準です。次の章で、その理由を整理します。
なぜ「設置して終わり」ではないのか
結論:気流は、扉の開閉や設備の経年変化で、知らないうちに基準を下回ることがあるためです。
喫煙専用室の気流は、常に一定とは限りません。たとえば次のようなことが、気流の低下につながり得ます。
- 出入口の扉が頻繁に開閉される、あるいは開けっぱなしになる時間が長い
- 換気・排気設備のフィルターの目詰まりや経年劣化
- 室内外の空調バランスの変化(近くの空調設備のレイアウト変更など)
見た目には「いつもどおりの喫煙室」でも、気流だけが基準を下回っていることがあります。だからこそ、設置時の基準適合を確認するだけでなく、稼働後も定期的に状態を確認することが実務上重要になります。
基準は、どのくらいの頻度で確認すればいい?(法令の義務ではなく、国の推奨です)
結論:厚生労働省の参考資料は「概ね3か月以内ごとに1回」を目安として示していますが、これは法令上の義務ではありません。
ここは誤解が多いポイントなので、正確にお伝えします。喫煙専用室の設置基準そのものは法的義務ですが、「設置後どのくらいの頻度で測定・確認するか」については、健康増進法や施行規則が具体的な頻度を義務づけているわけではありません。厚生労働省の参考資料(測定方法の例。以下は屋外排気型の喫煙専用室を対象とした資料に基づく内容です)では、次のように示されています。
受動喫煙対策の効果を検証するため、四季による気温の変化や空気調和設備の稼働状況を考慮して、概ね3月以内ごとに1回以上、定期的に測定日を設けて測定を実施すること。なお、測定の結果、良好な状態が1年以上継続し、かつ、当該区域のたばこ煙濃度に大きな影響を与える事象(自然現象含む。)がない場合、測定頻度を1年以内に1回までの範囲で減らしても差し支えない。

つまり「1年経てば自動的に年1回でよい」わけではなく、「良好な状態が1年以上続いていること」と「たばこ煙濃度に大きな影響を与える事象(自然現象を含む)がないこと」の両方が、頻度を減らす条件です。移転・改装・換気設備の変更など、気流に影響しそうな出来事があれば、その都度あらためて確認するのが安全です。なお、この軽減規定は屋外排気型の資料で確認されたものであり、脱煙機能付き喫煙ブースにも同様に適用できるかは現時点で未確認のため、本記事では脱煙ブース側への一般化はしていません。
屋外に排気できない喫煙室には、追加の基準があります
結論:TVOC(総揮発性有機化合物)の測定が関係するのは、脱煙機能付き喫煙ブース(経過措置)に限られます。
屋外排気が構造上難しい既存の建築物などでは、脱煙機能を持つ喫煙ブースを使うことが、経過措置として認められる場合があります。ただしこの経過措置には①2020年4月1日時点で現に存する建築物であること②管理権原者の責めに帰さない事由で屋外排気が困難であること③代替措置により同程度にたばこの煙の流出を防止することという3つの条件があり、出入口の気流0.2m/s以上という基準も他の喫煙専用室と同様に求められます。そのうえで、脱煙装置には性能基準が設けられており、TVOC除去率95%以上・排気粉じん0.015mg/m³以下(厚生労働省ガイドライン〔基発0701第1号〕に定める要件。施行規則本体に数値そのものの規定はありません)を満たす必要があります。

一方で、屋外に直接排気できる一般的な喫煙専用室では、TVOC測定は基準の対象になりません。「喫煙室=TVOC測定が必要」ではなく、脱煙ブース(経過措置)を使っている場合に関係してくる話だと押さえておいてください。
誤解しやすい3つのポイント
| よくある誤解 | 正しくは |
|---|---|
| 「1年経てば自動的に年1回でよい」 | 「良好な状態が1年以上継続」かつ「濃度に大きな影響を与える事象がない」ことが条件です |
| 「気流や区画に問題があれば、いきなり罰則」 | 所管の都道府県知事等による勧告を受け、それでも改善されない場合に事業者名等の公表、さらに命令へと段階を踏みます |
| 「喫煙室の測定には特別な資格が必要」 | 気流やTVOCの測定そのものに特定の資格要件は定められていません。ただし正確な測定には専用の機器と基準への理解が必要です |
基準を満たしているか、どこに確認してもらえばいい?
自社で気流を目視や体感で確認することは難しく、専用の測定機器での確認が現実的です。当社(尾北環境分析株式会社)では、喫煙専用室の気流測定、脱煙機能付き喫煙ブースをお使いの場合のTVOC測定に対応しています。「設置してから一度も確認していない」「最近、扉の開閉が増えた」「レイアウトを変更した」といったタイミングでのご相談も承ります。
よくある質問
Q. 喫煙専用室は、法律で定期的な測定が義務づけられていますか?
A. 気流・区画・屋外排気という設置基準そのものは法的義務です。一方で「どのくらいの頻度で測定・確認するか」は、厚生労働省の参考資料が目安を示しているものであり、法令上の測定義務ではありません。
Q. 2020年より前から設置している喫煙室も対象ですか?
A. 対象です。設置時期による猶予や適用除外の規定はなく、2020年4月1日の全面施行以降は、新しく設置した喫煙室でも、それ以前から使っている喫煙室でも、同じ技術基準を満たす必要があります。ただし、建物の構造上どうしても屋外排気ができない場合に限り、脱煙機能付き喫煙ブースを使う経過措置があります。この経過措置には、①2020年4月1日時点で現に存する建築物であること②管理権原者の責めに帰さない事由で屋外排気が困難であること③代替措置により同程度にたばこの煙の流出を防止することという3つの条件があります。
Q. 基準を満たしていないと、どうなりますか?
A. まず所管は、労働基準監督署ではなく都道府県知事(保健所を設置する市は市長、特別区は区長)です。基準を満たしていないことが分かった場合は、勧告→公表→命令という段階を踏んで進み、命令にも従わない場合は、健康増進法第76条第1号(第34条第3項の命令違反)に基づき50万円以下の過料の対象になります。とはいえ、いきなり過料という制度ではありません。まずは自社の喫煙室が基準を満たしているかを確認するところから始めてみてください。
Q. 測定には資格が必要ですか?自社の担当者でもできますか?
A. 気流やTVOCの測定そのものに、特定の資格要件は定められていません。ただし、出入口のどこで・どのように測るかなど、正確な測定には専用の機器と基準への理解が必要です。自社での確認が難しい場合は、専門の測定機関へのご相談もご検討ください。
まとめ
喫煙専用室の技術基準(気流0.2m/s以上・区画・屋外排気)は、設置時だけでなく、稼働している間ずっと満たしておくべき法的な基準です。厚生労働省の参考資料は、概ね3か月以内ごとの確認を目安として示しており、良好な状態が続けば頻度を減らせる場合もあります。「設置して終わり」にせず、定期的な状態確認を検討してみてください。
喫煙専用室の気流測定・脱煙ブースのTVOC測定は
設置してから一度も確認していない、レイアウトを変更した——そんなときは、まずはお気軽にご相談ください。
出典
- 健康増進法第33条第1項・同法施行規則第16条第1項(喫煙専用室の技術基準=気流0.2m/s以上・区画・屋外排気)
- 健康増進法附則(平成30年7月25日法律第78号)第1条・厚生労働省健発0222第1号(施行日。2020年4月1日全面施行)
- 健康増進法施行規則附則(平成31年2月22日厚生労働省令第17号)第4条(脱煙機能付き喫煙ブースの経過措置の3条件。具体的な性能数値の規定はなし)
- 健康増進法第34条(勧告・公表・命令の3段階)・第36条・第38条、附則第2条第5項(取締り主体=都道府県知事等)
- 健康増進法第76条第1号・第34条第3項(命令違反の過料=50万円以下)
- 厚生労働省「たばこ煙の流出防止措置の効果を確認するための測定方法の例」該当1頁(測定頻度の目安。屋外排気型を対象とした資料での確認・脱煙ブース側は未確認):https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000525313.pdf
- 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」基発0701第1号(令和元年7月1日)別紙2(脱煙機能付き喫煙ブースの性能基準=TVOC除去率95%以上・排気粉じん0.015mg/m³以下。法令〔施行規則附則4条〕本体ではなく本ガイドラインに定める要件):https://www.mhlw.go.jp/content/000524718.pdf
- 国立がん研究センター「受動喫煙対策に関する世論調査」(令和5年5月31日公表。20歳以上の重み付け調整済み回答者2,000人分のデータを使用。調査全体の回答者は18・19歳を含め2,029人):https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/project/tabacco/20230531.pdf
※法令・告示・参考資料は改正・更新される場合があります。最新の内容は厚生労働省の公表資料または専門家にご確認ください。
この記事の監修・執筆
尾北環境分析株式会社(愛知県江南市)
作業環境測定・分析の実績をもとに、製造業・オフィスなど幅広い事業者の安全衛生担当者を実務面から支援しています。喫煙専用室の気流測定・脱煙ブースのTVOC測定についてもご相談いただけます。