【コラム】食品用ラップから見える環境問題とは?
皆さんのご家庭では、食品用のラップには何を使用されていますか?
商品名で恐縮ですが一般的にはポリラップや、ちょっとお高いサランラップなどを使われていると思います。
では、上記のような私たちが普段から使用しているプラスチック製品は処理時どのような問題が発生するのでしょうか?
今回は、家庭用ラップから見える環境問題についてご紹介したいと思います。
まず、ポリラップとサランラップの違いを見てみたいと思います。
ポリラップについて
宇部フィルム株式会社の商標であり、ポリエチレンという樹脂でできています。
切りやすさ、くっつきやすさ、ニオイ移り防止などはサランラップと比べると劣りますが、環境素材であると言われています。
サランラップについて
旭化成株式会社の商標でポリ塩化ビニリデンという樹脂でできています。
ポリ塩化ビニリデンは固いので柔軟剤や安定剤などの添加物を使いその欠点を補うことによって、切れやすさ、くっつきやすさ、ニオイ移り防止など食品の保存という点において高性能を持たせています。価格が高めです。
次に、両者を環境の面から比較します。
環境の面からの比較
ポリラップの原料であるポリエチレンは炭素と水素しか含まれておらず、塩素は含まれていませんので、燃やしてもダイオキシン発生原因となる心配がないと言われています。
また、添加剤も使用されていないため、環境にやさしい素材と言われています。
一方サランラップの樹脂の中には炭素と水素のほかに「塩素」が含まれるため、燃やした時にダイオキシンの発生が懸念されます。
また、樹脂の中に含まれる添加物が内分泌かく乱物質(環境ホルモン)として作用し、環境中で生態系を混乱させることが懸念されています。
こういったポリ塩化ビニリデンを使ったラップによる環境問題がクローズアップされたのは1990年代~2000年ごろで、当時は環境ホルモンという言葉も使われ始めたり(1997年11月ごろに日本放送協会と井口泰泉(横浜市立大学教授、当時)が「環境中に存在するホルモンのような物質」という意味合いから環境ホルモンという通称を考案した。)、ダイオキシンについても問題がクローズアップされており(平成11年(1999年)にはダイオキシン類特別措置法が成立)環境問題が社会的な問題となって、サランラップをはじめとするポリ塩化ビニリデン製のラップが悪者扱いされていたという記憶があります。
しかし現在では、食品に用いられる器具・容器包装は、食品衛生法に基づき規格基準が定められ、合成樹脂製の食品用ラップフィルムには、「食品、添加物等の規格基準」の第3のA「器具若しくは容器包装又はこれらの原材料一般の規格」のほか、Dの2「合成樹脂製の器具又は容器包装」の項において、材質試験及び溶出試験の規格が適用されます。
また、合成樹脂の衛生に関する業界団体では、使用できる原材料のリストを定め、ラップフィルムに使用する添加剤を限定するなど、食品に使われるプラスチック製品の安全性を高めるための自主的な取組を行っているため、1990年台当時と比較して安全性は格段に向上していると考えられます。(ただし、市販のラップフィルムには、材質、用途や耐熱温度等の特性、取扱い上の注意事項などが表示されています。注意事項に従わない使い方をするとラップが破れたり溶けたりして食品の中に入るおそれがあることから、注意事項にしたがった取扱いをすることが必要です。)
次に、ダイオキシン問題についてご説明します。
ダイオキシン問題について
ダイオキシン問題に関しては、1997年にごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドラインが改正され、ゴミ焼却工場の全連続炉における適切な焼却(排出ガス対策、ごみ処理の広域化、間欠炉の廃止)が指導されるようになり、ダイオキシンが発生しにくい(燃焼温度850℃以上・2秒以上、不完全燃焼を起こりにくくする、集じん器入口排ガス温度を低温化(200℃未満))タイプの焼却炉が増えていったことから、発生する量はかなり低減されるようになっています。
このように食品用ラップに関する、環境ホルモン溶出についての問題や、ダイオキシン発生原因としての問題はひとまず解決に向かっています。
しかし、最近はマイクロプラスチックによる環境汚染の問題がクローズアップされてきています。
マイクロプラスチックによる環境汚染の問題について
マイクロプラスチックによる環境汚染を軽減するために、プラスチック製ストロー使用自粛の動きがあったことが記憶に新しいと思います。
食品ラップもプラスチックですので、無関係ではありません。
マイクロプラスチックによる環境問題は研究が始まったばかりの新しい環境問題ですので、今後の進展に注目していきたいと思います。
最後に
今回のブログでは、家庭用ラップから見える環境問題についてご紹介しました。
環境問題をひとつでも減らして住みやすい地球にしていきたいですね。